12/23 23:32 UP!
夢
時代の本質を見抜く優れた批評家であり、類まれな空想小説家であり、有能なビジネスマンでもある。
だからこそ、彼はいつでもひとりである。
発する言葉の端々にはいつでも英国紳士風のユーモアがあり、いつでも店員さんに優しい。
多くの人が彼の理性に信頼を置いており、無言の尊敬を集めている。
だからこそ、彼はいつでもひとりである。
単に優しい人、面白い人、調子に乗っている人は世の中に沢山いる。
しかし、彼の中には優しさと厳しさとが同居している。
彼は人を笑わせることに関して一流だが、人から笑われることは決してない。
彼の瞳の奥には、世界に対する絶望と、少年のような無垢な希望とが同時にある。
彼の行いはときに人から誤解を受けるが、彼が生きている限り、その誤解はいつか必ず解ける。
彼の小説は決して一流のエンターテイメントではない。言葉はいつも足りないし、選ぶテーマも稚拙である。
しかし、料理人も教師も犯罪者も揃って口にする。
「あいつと同じ時代でよかった」
そういう者に、私はなりたい。