2/10 23:32 UP!
【冬に咲く小さな桜】

この街のどこかにあると言われているその街灯。一見ふしぎな形をしているけど、初めて見た感じがしない親しみやすい形の街灯。いままで悪いことをせずに嘘をついてこなかった人には願いを叶えてくれるというその街灯。今日も街のどこかでアナタを明るく照らしている。
気がつけばもう2月の末、もうすぐそこで待っているはずの春を感じれることなど微塵もできないくらいに街は冷え込んでいる。風が吹くたびに雪は舞い、こちらめがけて冷気を刺してくる。
たくさんの人が目の前を交差するように通り過ぎていく、その先々には確かな目的地があり一人ひとり人生を歩んでいる。決して交わることはなく。
「はぁ」
街ゆく人の漏れたため息が白く色付いたのを見て遠い記憶が蘇る。あぁもうそんな季節なのかと。
こんな寒い日には母がつくるクリームシチューの味を思い出す。ルーを使わず小麦粉と牛乳とバターを優しく溶かし、じっくりと炒めた玉ねぎの甘さが口の中いっぱいに広がるあのシチューの味が忘れられない。
そんな冬の味わいに思いを馳せていると目の前を歩いていた小さな女の子が足をとめた。
頭にかぶった桜色のニット帽が白銀の景色によく映えている。少し大きめなのもチャーミングだ。
「おーい離れると迷子になっちゃうよ」
少し離れたところからその子の父親が声をかける。
「ねぇパパこれみて、この電気へんなの」
少女の視線が上にあがる
「ほんとだ変わった形だねぇ、こんなとこに街灯なんてあったかな」
その家族は首をかしげその場を動こうとしない。暖かな会話は続くようだ。
「パパこの電気きれちゃいそうだよ、ずっとチカチカしてるもん。いそいで新しいのに変えてあげなきゃ」
少女の視線はとなりにいるパパへと向けられる。優しい子に育ってくれたなと感心した父親は
「そうだね、でもパパは新しい電気を持ってないから電気の専門の人にお願いしようか」
「せんもんってなぁに?」
「そうだな~、専門ていうのはね…あ、いけない。早く帰らないとママのご飯食べれなくなっちゃうよ、今日は大好物のあれだよ」
「やった!ブロッコリーもたくさん食べちゃお、でもパパもう少しだけこの電気さんとお話しててもいい?すぐ帰るから」
「もぉお家すぐそこだけど遅くなったらダメだからね、パパがシチュー全部食べちゃうぞ」
そう言いながら父親は家へと歩き出す
「お話するってあなたこの電気が見えるの?」
私は思わず聞いてみた、すると
「うん、ちゃーんと見えるてるよ、なんかお人形みたいで変わってるけど」
少女はそう答えクスクス笑う
そうか、この子なんだね。じゃあ願いを叶えてあげなきゃ。
「ねぇ聞いて、あなたの願いを1つなんでも叶えてあげる」
目を見開き少女の顔中に喜びが溢れる
「願い事!なんでもいいの?じゃあ冷蔵庫の中をアイスでいっぱいにしようかな、でもこの前お店でみた水玉のお洋服も欲しいし、んー」
すこし考えて、少女はこう答えた
「あっ、まずは新しい電気に変えてあげなきゃだね、暗くなったら私おうちまで帰れなくなっちゃうもん」
なんと優しい子なんでしょう、こみ上げてきた涙をぐっと堪えて
「ほんとに、本当にその願いでいいの?」
まっすぐ私を見る目に迷いはなく
「うん!」
少女が答えた次の瞬間、さっきまでの会話は冬の静けさにのみ込まれ、また凍えるような音のない世界が訪れる。
街灯に明るく照らされた桜色のニット帽だけを残して。
この街のどこかにあると言われているその街灯。一見ふしぎな形をしているけど、初めて見た感じがしない親しみやすい形の街灯。いままで悪いことをせずに嘘をついてこなかった人には願いを叶えてくれるというその街灯。今日も街のどこかでアナタを明るく照らしている。
それは昨日より輝きをまして。
気がつけばもう2月の末、もうすぐそこで待っているはずの春を感じれることなど微塵もできないくらいに街は冷え込んでいる。風が吹くたびに雪は舞い、こちらめがけて冷気を刺してくる。
たくさんの人が目の前を交差するように通り過ぎていく、その先々には確かな目的地があり一人ひとり人生を歩んでいる。決して交わることはなく。
「はぁ」
街ゆく人の漏れたため息が白く色付いたのを見て遠い記憶が蘇る。あぁもうそんな季節なのかと。
こんな寒い日には母がつくるクリームシチューの味を思い出す。ルーを使わず小麦粉と牛乳とバターを優しく溶かし、じっくりと炒めた玉ねぎの甘さが口の中いっぱいに広がるあのシチューの味が忘れられない。
そんな冬の味わいに思いを馳せていると目の前を歩いていた小さな女の子が足をとめた。
頭にかぶった桜色のニット帽が白銀の景色によく映えている。少し大きめなのもチャーミングだ。
「おーい離れると迷子になっちゃうよ」
少し離れたところからその子の父親が声をかける。
「ねぇパパこれみて、この電気へんなの」
少女の視線が上にあがる
「ほんとだ変わった形だねぇ、こんなとこに街灯なんてあったかな」
その家族は首をかしげその場を動こうとしない。暖かな会話は続くようだ。
「パパこの電気きれちゃいそうだよ、ずっとチカチカしてるもん。いそいで新しいのに変えてあげなきゃ」
少女の視線はとなりにいるパパへと向けられる。優しい子に育ってくれたなと感心した父親は
「そうだね、でもパパは新しい電気を持ってないから電気の専門の人にお願いしようか」
「せんもんってなぁに?」
「そうだな~、専門ていうのはね…あ、いけない。早く帰らないとママのご飯食べれなくなっちゃうよ、今日は大好物のあれだよ」
「やった!ブロッコリーもたくさん食べちゃお、でもパパもう少しだけこの電気さんとお話しててもいい?すぐ帰るから」
「もぉお家すぐそこだけど遅くなったらダメだからね、パパがシチュー全部食べちゃうぞ」
そう言いながら父親は家へと歩き出す
「お話するってあなたこの電気が見えるの?」
私は思わず聞いてみた、すると
「うん、ちゃーんと見えるてるよ、なんかお人形みたいで変わってるけど」
少女はそう答えクスクス笑う
そうか、この子なんだね。じゃあ願いを叶えてあげなきゃ。
「ねぇ聞いて、あなたの願いを1つなんでも叶えてあげる」
目を見開き少女の顔中に喜びが溢れる
「願い事!なんでもいいの?じゃあ冷蔵庫の中をアイスでいっぱいにしようかな、でもこの前お店でみた水玉のお洋服も欲しいし、んー」
すこし考えて、少女はこう答えた
「あっ、まずは新しい電気に変えてあげなきゃだね、暗くなったら私おうちまで帰れなくなっちゃうもん」
なんと優しい子なんでしょう、こみ上げてきた涙をぐっと堪えて
「ほんとに、本当にその願いでいいの?」
まっすぐ私を見る目に迷いはなく
「うん!」
少女が答えた次の瞬間、さっきまでの会話は冬の静けさにのみ込まれ、また凍えるような音のない世界が訪れる。
街灯に明るく照らされた桜色のニット帽だけを残して。
この街のどこかにあると言われているその街灯。一見ふしぎな形をしているけど、初めて見た感じがしない親しみやすい形の街灯。いままで悪いことをせずに嘘をついてこなかった人には願いを叶えてくれるというその街灯。今日も街のどこかでアナタを明るく照らしている。
それは昨日より輝きをまして。