4/8 02:31 UP!
『活動開始』
東京―――最初に見たのも確か、春だった。
無数の欲望、羨望、希望が複雑に絡み合い、ねばついた泥沼に浮ついた足を取られるような心地で、僕は敷きたてのアスファルトの上を歩いていた。その日は大学の入学式で、よく晴れていた。
間近で見るとその迫力に圧倒される、巨大な高層ビルの群れ。
繁華街から脇道へ逸れると姿を見せる、怪しいネオンが光るラブホテル街。
誰もが聞き覚えのあるターミナル駅の名が次から次へと流れる、山手線のアナウンス。
なにもかもが新鮮で、そう感じる度に歩みを止め、思わず口をついていた。
「東京すげぇ」
あれからどれ程の時間が経ったのだろう。
今では同じ場所を、立ち止まることなく歩いている。
目に映る東京には、もうあの頃の胸を締め付けるような輝きはない。
次の予約へと向かう途中、少しの間立ち止まり、じっと手を見る。
ちょっとは成長できているのだろうか。
あの頃に思い描いていた、理想の自分に。
※この物語はフィクションです。
無数の欲望、羨望、希望が複雑に絡み合い、ねばついた泥沼に浮ついた足を取られるような心地で、僕は敷きたてのアスファルトの上を歩いていた。その日は大学の入学式で、よく晴れていた。
間近で見るとその迫力に圧倒される、巨大な高層ビルの群れ。
繁華街から脇道へ逸れると姿を見せる、怪しいネオンが光るラブホテル街。
誰もが聞き覚えのあるターミナル駅の名が次から次へと流れる、山手線のアナウンス。
なにもかもが新鮮で、そう感じる度に歩みを止め、思わず口をついていた。
「東京すげぇ」
あれからどれ程の時間が経ったのだろう。
今では同じ場所を、立ち止まることなく歩いている。
目に映る東京には、もうあの頃の胸を締め付けるような輝きはない。
次の予約へと向かう途中、少しの間立ち止まり、じっと手を見る。
ちょっとは成長できているのだろうか。
あの頃に思い描いていた、理想の自分に。
※この物語はフィクションです。